こんにちは、エンジニアの松井です!
GoogleがChromeの3rd Party Cookie廃止の撤回をしたことは記憶に新しいことと思います。
実はこの撤回に際して、代替案が示されていること、さらにはCookie規制のその先のプライバシー保護について言及されていることはご存知でしょうか?
Cookieレスを追い続けているエンジニアである私が、今回のGoogleのリリースの解説とそれに関する私見をお届けします。
Googleが3rd Party Cookie廃止を撤回
Googleはプライバシー保護のため、4年もの間3rd Party Cookieの廃止を目指していました。
そんな中、7月22日に3rd Party Cookie廃止の撤回をし、代替案として「ユーザーの選択に任せる」事を提案しました。
この代替案については世界中の規制当局と協議を続けていくそうです。
https://privacysandbox.com/intl/en_us/news/privacy-sandbox-update/
一方で、CMAと共にPrivacy Sandboxを調査しているICO(英国のデータ保護機関)はこの撤回についての失望を声明として発表しています。
▼リリース記事
(ICO statement in response to Google announcing it will no longer block third party cookies in Chrome)
また、Webの標準化団体W3Cはブログで「3rd Party Cookieは廃止すべき」という投稿をしました。
▼リリース記事
(Third-party cookies have got to go)
代替案の実現について
「ユーザーの選択に任せる」という代替案について、Googleは下記のように示しています。
a new experience in Chrome that lets people make an informed choice
「lets people make an informed choice」が何を意味するかは詳細はわかっていませんが、もしこれがインフォームド・コンセントを意味しているなら、とても本質的なアプローチだと思います。
というのも、基本的にCookie規制におけるポイントは「人々の明示的かつ積極的な同意なしに第三者の追跡を行うことはできない」という所謂インフォームド・コンセントです。
しかしその実現は簡単ではないと思っています。
例えばサイトを訪れたりアプリをインストールする度、プラポリを読んで理解しようとするでしょうか?
また、3rd Party Cookieとそのリスク・メリットの説明がされたとして、ユーザーはそれを十分に理解出来るでしょうか?
もしユーザーが理解の上選択出来たとして、3rd Party Cookieの利用を選択するかというと、多くのユーザーは選択しないのではないかと思います。
それはGoolgeだけでなく、Webマーケティング業界全体にとって望ましくない状況かもしれません。
もちろんGoogleの代替案がインフォームド・コンセントを意味していないケースもあり得ます。
しかし、そのケースでユーザーが3rd Party Cookieの利用に同意したとして、本当にそれは「ユーザーの選択」の結果なのか?という疑問が残ります。
3rd Party Cookie廃止の撤回に失望や反対をしている団体からすると、代替案に向ける目線は厳しいものになるでしょう。
いずれにせよ、代替案に関する規制当局との調整には時間がかかるものと予想しています。
そして結局は3rd Party Cookieが活用しづらくなり、Web広告のパフォーマンスへの悪影響は避けられません。
Cookie規制のその先
Googleは3rd Party Cookie廃止の撤回と共に、ユーザー情報であるのIPアドレスの保護についても言及しています。
We also intend to offer additional privacy controls, so we plan to introduce IP Protection into Chrome’s Incognito mode.
3rd Party Cookie廃止についての議論に比べ、あまり取り沙汰されていないように見受けますが、実は注目のポイントだと思っています。
IPアドレスは基本的に日本やアメリカでは個人データと見なされておらず、Cookieのように厳しい規制を受けていません。
しかし、このIPアドレスはCookieレス対応の1つである推定IDの生成に使われています。
そのためIPアドレスが保護されると、IDの推定精度が悪化すると思われます。
※推定IDについて知りたい方はこちら
すると、相対的に1st Party Dataや確定IDの重要性が高まります。
それらを大量に保有しているGoogle, Amazon, Metaなど大手プラットフォーマーが更なる権勢を誇るか、あるいは企業間の1st party Dataの統合・集約が進むかもしれません。
Cookie規制はプライバシー保護の一環でしかありません。
Cookieの次にはまた別のユーザー情報の規制が待っていると考えられます。
まとめ
3rd Party Cookie廃止の撤回がされても、広告主や代理店にとって根本的な状況は変わっていないというのが私見です。
プライバシー保護は進み、Cookieレス対応の重要性はより高まっていきます。
SafariやFirefoxはすでに3rd Party Cookieを規制していますし、Edgeも規制に向けテストを続けています。
Chromeはまだ少し時間があるかもしれませんが、それでも今より3rd Party Cookieは使いづらくなるでしょう。
現在弊社では、下記のような計測技術の導入支援を行っています。
・Conversion API
・拡張CV/詳細マッチング
・共通ID
これからは計測支援を強化するとともに、これに関わらずより広範な支援についても情報収集と検討を深め、Cookieレス環境に立ち向かう皆さんの一助となるべく邁進していきたいと思います。
▼参考記事